森の奥深くに知る人ぞ知るおにぎり妖精の住む屋敷がありました。そのお屋敷では、みんなが元気になって夢を叶えるというおにぎりをせっせと作っています。
元気の源せっかちヨーくん。冷静沈着しっかりナナちゃん。二人が作るおにぎりは人を元気にさせ、瞬く間に人気になりました。
だけど、大量生産することはできず、また、人々の欲望に疲弊したおにぎり妖精は、今は森の奥深くで本当に必要な人へ届くようにと願いながらひっそりと作っています。
そんな中、人生に迷った占い師がこの屋敷に辿り着きました。すぐにヨーくんが温かくお出迎えします。なぜなら、この屋敷に辿り着けるのは、限られた人のみだからです。
「いらっしゃい。どのおにぎりにする?」
「まあまあ、そんなに焦らないの。今、着いたばかりなんだから。」
とナナちゃんがヨーくんをなだめます。
「あの・・・もしかしてここはおにぎり屋敷?」
「ええそうよ。」
「本当に辿り着いたんだ・・・」
そう言って、占い師は安堵し膝をつきました。
「どうしたんだ?」
すかさずヨーくんは訳を聞きます。
「私もう自分の力が信じれなくて。」
「どういうこと?」
ナナちゃんは心配そうに声をかけます。
「私は、占い師をしているのですが、タロットカードは頑張ってもなかなか上手にならないし全然当たらないし、それで私には才能がないのかなって。もう占い師をやめようかと思っていたんです。
それでも最後に自分の力を信じたいと思って、直感でこの屋敷の道を導き出しました。右に行くか左に行くかその都度、自分の心に聞きながら。それで、辿りついたってことは、私、力があったんだ。」
その占い師は、両手を地面に突きワンワン泣きました。
ヨーくんとナナちゃんは優しく見守ります。しばらくして占い師は、
「あの・・・おにぎりいただけますか?」
「もちろんだ。具は何がいい?」
ヨーくんは、待ってましたとばかりにすぐに返答します。
「鮭が好きです。」
占い師は何か吹っ切れたように注文しました。
「はいよ、任せとけ。」
ヨーくんとナナちゃんはなれた手つきでおにぎりを作り始めました。
にぎにぎ、にぎにぎ
元気になーれ
にぎにぎ、にぎにぎ
自分を信じて
にぎにぎ、にぎにぎ
力はあるよ
にぎにぎ、にぎにぎ
大丈夫
二人の鼻歌のようなおにぎりソングが心を軽くさせます。
「はい、できたよ。」
ナナちゃんは、二つの鮭おにぎりをお皿にのせて明るく差し出します。
「ありがとう、いただきます。」
一口食べて
「美味しい!鮭の塩見がちょうどよくて、どこか懐かしいお母さんの鮭おにぎりみたいで、ホッとする。」
安堵感からか涙が溢れます。あっという間におにぎりはなくなり、すると、
「もう一つ食べられる?」
とナナちゃんが聞きます。
「もちろん!」
「じゃあこれ食べてみて。」
と、イクラのおにぎりを出してくれました。
「美味しい!元気なプチプチの食感がクセになる。」
すると、ナナちゃんは何か分析の結果を導き出したかの様に
「そうでしょ。ねえ、この新鮮で透き通ったイクラのような水晶占いなんてどうかしら?」
「突然、どうしたんですか?」
その分析の所以を知りたいとばかりに質問する。
「あなた、ここへは直感で辿り着いたって言ったわよね。」
「はい。」
「そんなことって普通はありえないの。すごく力があるってことよ。」
「でも、私、タロット占いを習得するために弟子入りし修行も沢山して・・・」
「ねぇ、タロットが好きなの?」
「いえ。ただ、流行っているし、とにかく有名な先生の元で学べば占い師になれると思って。」
「それよ。あなたは、タロット使わなくたって直感で降りてくる人よ。それは神がおろした言葉よ。」
「そういえば、小さい頃から直感が鋭いって言われていました。ここに辿り着いたのも直感で道順を・・・。」
その言葉に占い師は目をキラキラさせています。自分自身への自信のなさから沢山修行しなきゃって思っていたようです。それでもやはり自信のない占い師は
「でも、私本当に才能があるんでしょうか?」
「何を言っているの?あなたはここに辿り着けたじゃない?」
「それが才能があるっていう証拠よ。」
「そうなんですか?」
「そうよ。この場所を求める人は沢山いるわ。それでも辿り付けるのは、真に自分を信じると誓った人だけ。」
「私、最後に自分を信じたいと願いました。」
「そう、それこそが、あなたのパワーよ。」
占い師は再び占いをすることを決意しました。
今度は、誰かに教えをこうことや何かにすがることをやめて。ただシンプルに目の前の人に必要な言葉をおろすのです。水晶を通して見えるその人の本来の姿を伝える。
そして、あのおにぎりソングと一緒で、最後は必ず「大丈夫」そう言って。
瞬く間にその水晶占いは人気になりました。
・・胸の奥に光が咲く BLOSSOM STORY・・
さて、君もおにぎり妖精に会いたい?迷った時、つまずいた時・・・会いたいよね。
おにぎり妖精は、森の奥の深くにいる、だからきっと、会いに行くのは難しい。
でもねもっと簡単な方法があるよ。
それは君の心の中。
おにぎりを食べて元気になる、そのパワーこそが妖精そのものなのだから。